研究概要 |
骨格筋の速筋線維にはNO合成酵素が豊富に存在しているが、その機能については、明らかにされていない。ウサギの後肢骨格筋から作成したSR膜標本を、NOで処置すると、NOの用量依存的にSERCA1-ATPase活性を阻害した。また、このときのSR膜標本内へのCa^<2+>の取り込み量を測定すると、同様の抑制が認められた。NO (100μM以下)によるSERCA1-ATPase阻害効果は一過性であり、処置後15分で完全に回復した。 NOによるSERCA1-ATPaseの阻害は、NO処置後すぐにGTP-γsを添加することにより用量依存的に回復した。それに対して、GTP-γsの代わりにGDP-βsを処置しても何ら影響が認められなかった。以上のことより、NOによるSERCA-ATPase阻害機構にはGTP結合タンパク質が関与している可能性が考えられた。ところが、NOを処置していないSERCA1-ATPaseに、GTPあるいはGTP-γsを添加してもその活性には何ら影響が認められなかったことより,GTP結合タンパク質のSERCA1-ATPaseに対する作用機構に関して今だ不明瞭な点が存在する。また、以前我々は、ウサギの後肢骨格筋ホモジネイトの超拘束遠沈(125,000xg60分)後に得られた上清中にSERCA1-ATPaseを活性化する未同定タンパク質が存在することを確認しており、本タンパク質の精製およびGTPに対する結合能を調べている。 骨格筋におけるSERCA1-ATPaseの機能調節に関する詳細については、いまのところ明らかでない。本研究は今後、NOとGTP結合タンパク質両者のSERCA1-ATPase機能に対する調節機構を詳細に検討する予定である。
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