研究概要 |
先に、離乳直後の子ウシは十分量の飼料を摂取できないため低栄養状態に陥るが、その後、摂食量の増加に伴って、一時的に栄養素の利用性が著しく増加する結果、窒素栄養状態が急速に回復に向かうこと、ならびにこの影響は骨組織においてとくに顕著に認められることを明らかにした(J.Anim.Sci.72:732-738.1994;J.Nutr.126:898-905.1996)。そこで、本研究は、動物の栄養素利用調節に関して、ラットを用いて現象面と機構面から検討した。 4週齢のWistar系雄ラットを、市販ラット用飼料で不断給餌条件下で2週間飼育した後、4日間絶食を行い、再び不断給餌した。その結果、絶食3,4日目になると糞中、尿中とも窒素排泄が減少し、窒素蓄積の悪化は最小限に止まった。再給餌によって窒素堆積は一過性に著増したが再給餌7日目には絶食前の値まで減少した。側鎖アミノ酸は絶食の影響をあまり強く受けなかったが、それ以外のヒドロキシプロリン(骨吸収の指標)を含む血漿遊離アミノ酸濃度は絶食によって減少した。これらの結果は、ウシで見られた、栄養条件の変化(栄養制限とその解除)に対応する同化調節がラットでも起こり、低栄養条件では骨吸収も減少する可能性を示唆している。栄養条件の変化に対する骨代謝調節因子を同定するため、絶食時に特異的に発現している遺伝子をAP-PCR differential display法で検索した。その結果、脛骨骨幹部では少なくとも8種類のPCR産物が絶食期に特異的に認められた。
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