研究概要 |
培養ラット胚の発育に必要な血清胚栄養因子の一次構造及び機能を調べた.本研究ではこれまでに,血清胚栄養因子は,酸に感受性のある糖蛋白質であること,ジスルフィド結合を有すること及びヘパリンに対する親和性を有しないことを示した.また,分子量は約18万であること,および分子量11.6万と6.2万のサブユニットからなるヘテロダイマーであることを明らかにした.今年度は,血清胚栄養因子のN末端アミノ酸配列を調べた.得られた配列と既知蛋白質とのホモロジーから機能を推定した.また,血清胚栄養因子の特異抗体及び部分合成ペプチドを作成しラット全胚培養により胚発育に及ぼす影響を調べた. その結果,N末端アミノ酸配列のホモロジー検索から血清胚栄養因子は補体成分C3と同一であることが明らかになった.精製したラット補体成分C3はラット全胚培養において胚栄養因子活性を示した.ラット血清からなる培養液には補体成分C3が非常に多く含まれるため,ウサギにおいて作成した抗補体成分C3抗体を培養液に添加しても培養ラット胚の発育阻害は認められなかった.また,補体成分C3のB細胞に対する成長因子活性の活性部位であるCR2結合部位の合成ペプチドには胚栄養因子活性は認められなかった.しかし,ラット血清からなる培養液中の補体成分C3量の測定により,補体成分C3は培養ラット胚により特異的に消費されることが示された. 以上の結果から,補体成分C3は培養ラット胚において,胚栄養因子として作用することが明らかになった.また,補体成分C3は,子宮内膜により合成されることが知られているので,生体内においても胚栄養因子として作用することが考えられた.
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