研究概要 |
本研究は牛卵巣における卵胞嚢腫の存在および嚢腫卵胞液中のステロイドホルモン濃度の違いが共存する直径1-7mmの小卵胞由来卵子の回収率、形態および体外成熟培養後の成熟率に与える影響を検討した。 屠場より左右卵巣表面に黄体が存在せず、直径が3cm以上でかつ卵胞液量が10ml以上の嚢腫卵胞が1個以上存在する牛26頭の左右卵巣ペアを採取した。嚢腫卵胞より卵胞液を採取してプロジェステロン(P4)およびエストラジオール17β(E2)の測定を行った。得られた卵巣を嚢腫卵胞が存在するものとしないものとに分け、各卵巣の小卵胞より卵巣毎に卵子を吸引採取して、卵子の細胞質および卵丘細胞の付着状況により5グループに分類した。卵子は体外成熟培養を行った後に固定、染色して卵核胞が崩壊しているものを成熟進行卵、極体の放出が観察されたものを成熟卵として成熟の度合いを調べた。結果は2つの評価方法を用いて比較検討した。 1.嚢腫卵胞の存在の有無により卵巣を分類した場合…採取できた卵子数、卵子の形態および体外成熟培養後の成熟率において、両卵巣群の間には有意差は見られなかった。さらに嚢腫卵胞が存在した卵巣において、嚢腫卵胞液中のP4とE2濃度から算出したP4/E2値によってP4-dominant,E2-dominantおよび両者の共存する卵巣に区分した場合においても卵子数、卵子の形態および成熟率には有意差は見られなかった。 2.各個体毎に得られた左右卵巣ペアにおいてE2-dominantの嚢腫卵胞の存在の有無により牛を分類した場合…左右卵巣から得られた総卵子数、卵子の形態および体外成熟培養後の成熟率には有意差は見られなかった。 以上の結果から牛卵巣において、嚢腫卵胞の存在および卵胞液中ステロイドホルモン活性の違いは共存する他の小卵胞の数、卵胞内卵子の形態および卵子の成熟に係わる機能に影響をおよぼさないことが判明した。
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