研究概要 |
免疫賦活剤として知られるβ-グルカンを利用した魚類感染症対策を目指し、本実験は魚類特有の働きを持つ好中球へのβ-グルカンの作用について検討した。以下の実験の結果、β-グルカンによる好中球機能の上昇は認められなかった。しかしながら、β-グルカン添加による好中球の抗原性の変化はわずかながらに観察され、好中球がβ-グルカンによって刺激されていると推察できた。好中球の機能面に変化が現れるようなβ-グルカンの投与量等の諸条件を見つけることが、今後の課題である。 1.好中球のナチュラルキラー(NK)活性に及ぼすβ-グルカンの作用。コイ頭腎から好中球を分離し、β-グルカン(0.1,1.0,10.0μg/ml)と共に25℃下で2時間および15時間培養した。培養後、K562細胞と25℃下で2時間混合培養(好中球:K562=5:1)を行い、K562細胞の生存率を測定することでNK活性を評価した。好中球のNK活性にβ-グルカンの効果は認められなかった。 2.β-グルカン添加による好中球の抗原性の変化。上記1と同様に好中球とβ-グルカンを混合培養した後、塗抹標本を作成し、蛍光抗体法によりモノクローナル抗体(mAb)を反応させた。蛍光顕微鏡による観察の結果、β-グルカン処理による好中球の抗原性に顕著な変化は認められなかったが、β-グルカン10.0μg/ml、2時間処理した区で、わずかながらmAbの反応性の上昇が観察された。 3.白血球の貧食率に及ぼすβ-グルカンの作用。魚体重10g当たり0.1mgのβ-グルカンをキンギョの腹腔内に接種し、水温20℃で飼育した。飼育1日後、2日後および7日後に白血球を回収し、貧食対象異物であるザイモザンと混合後、25℃、1時間培養した。β-グルカン接種されたキンギョの白血球の貧食率に変化は認められなかった。
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