研究概要 |
1、幽門括約部と十二指腸起始部の平滑筋組織を光顕的に観察した結果、モルモット・ラット・マウス・イヌにおいて胃内輪筋と括約筋はなだらかに移行するが、括約筋と十二指腸内輪筋は結合組織または血管により一部、連続性が断たれていた。十二指腸起始部の平滑筋の間には多くの結合組織が進入し、神経線維(抗PGP9.5抗体や抗S100b抗体に免疫陽性)や神経終末(抗Synapsin I抗体に免疫陽性)が非常に多く分布することが明らかになった。この密な神経は小腸内輪筋層における深筋層神経叢と連続していた。十二指腸の運動が胃とは異なる周期を持ち、かつ起始部から生ずることと併せて考えると、同部位の密な神経支配は十二指腸運動の開始に関与する可能性が高い。電顕レベルでの観察でも平滑筋束は結合組織により囲まれ、平滑筋の周りには多くの神経終末が分布し、他の内輪筋層と比較して非常に密であった。更に平滑筋と神経終末の割合、筋層内の間質細胞などを検索中である。 2、神経ペプチドの免疫組織化学により、十二指腸起始部の神経支配が密であることを示すことが出来た。この部位にはsubstance P,VIP,enkephalin,GRPに免疫活性を示す神経が非常に密に分布していた。 3、十二指腸と比較のため他の消化管部位を検索し、次のような新知見を得た。抗ニューロカルシン抗体を用いることで食道神経叢においてintraganglionic laminar endingsと呼ばれる知覚神経終末と神経筋接合部にはいる神経終末を免疫組織化学的に同定できた。結腸においてペースメーカー機能に関与するp層でのNO神経の分布をNO合成酵素に対する抗体を用いて明らかにすることが出来た。
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