タイト結合の膜蛋白であるoccludinは、N末端とC末端を細胞質側に向け細胞膜を4回貫通する。一方、タイト結合の裏打ち構造を構成する蛋白の一つであるZO-1はoccludinのC末端と結合し、occludinと細胞骨格の結合を仲介していると考えられている。本研究では、MDCK細胞にZO-1のoccludin binding domainのみを過剰発現し、occludinと細胞骨格の連絡を阻害することによりタイト結合に起こる変化を透過型電子顕微鏡およびフリーズフラクチャー法により形態学的に、また、transepithelial electrical resistanceにより機能的に評価することを目的とする。 最初に、マウス肺のcDNAライブラリーをスクリーニングしoccludinとZO-1のcDNAの一部を取得した。何れも、5'側の配列が不足していたのでPCRを用いて全長を取得した。次に、occludinの細胞質C末端に相当する領域をpGAD424 vectorに挿入し、マウス肝臓のcDNAをpGAD10 vectorに組み込んで作製したライブラリーをtwo hybrid systemを用いてスクリーニングした。しかし、occludinのC末端と特異的に結合する新たな蛋白質を見い出すことはできなかった。また、ZO-1のcDNAをpGAD10 vectorに組み込んで同様の実験を行ったが結果は得られなかった。そこで、実験系を変更し、in vitro filterbinding assay法により蛋白質相互作用を検討することにした。pGEX vectorにoccludinあるいはZO-1のcDNAを組み込みグルタチオン-S-トランスフェラーゼとの融合蛋白質として大腸菌に発現させ、filter上で蛋白質相互作用を検討する。現在、大腸菌による発現と精製を行っているところである。最近、membrane-associated guanylate kinase homologue familyのPDZ domainが他の蛋白質との結合に重要であることがわかってきた。ZO-1はこのファミリーに属しN末端にPDZ domainを持っており、特にこのdomainに注目して発現ベクターを構築中である。今後、さらに検討が必要である。
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