研究概要 |
本研究では,アンドロゲンが生殖細胞に対して直接的に作用するか否かを解明するため,今年度はその第一歩として,生殖細胞におけるアンドロゲンレセプター(AR)の局在を検討した。マウス成体精巣内AR発現について免疫組織化学的に検索を行い,セルトリ細胞,ライディッヒ細胞などと共に精祖細胞がAR陽性であるとの結果を得た。また,個体発生過程においては,精祖細胞のみならず,その前駆細胞である前精祖細胞も,セルトリ細胞,ライディッヒ細胞が未だAR陰性である胎齢14日以降から既にAR免疫陽性であった。電顕レベルでは,ARはエストロゲンやプロゲステロンレセプターと同様な核内局在を示すことを見い出した(Zhou,Kudo,Kawakami and Hirano,Anat.Rec.245,509)。 さらに成体精細管上皮にみられる一連の精祖細胞群の免疫反応性を検討すると,A型精祖細胞,B型精祖細胞がAR陽性であったのに対し,その後のpreleptotene期精母細胞ではAR陰性になること,更に精細管上皮の精子発生周期に伴いセルトリ細胞と精祖細胞のAR陽性強度が並行的に変化することを見出した(Kudo,Zhou,Kawakami and Hirano,Acta Histochem Cytochem,29 Sppl.,483)。これらの結果から,アンドロゲンは,精子発生過程に対し,セルトリ細胞を介する調節とは別に,未分化(前)精祖細胞の増殖,あるいは精祖細胞の分化過程へ直接関与する可能性が示唆された。精祖細胞のARがどのような発現調節を受けているのかについて,動物モデルおよびin situ hybridization法を用いた実験を現在更に継続中である。
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