本年度の研究目的は(1)細胞内カルシウムの空間的動態の解析(濃度上昇の空間的不均一性が生じるか否か)と(2)接着斑蛋白質チロシンリン酸化の空間的不均一性の解析を行い、血管内皮細胞における形態および細胞骨格の空間的不均一応答との関連を解明することにあった。 結果 (1)細胞内カルシウム空間的動態 外液カルシウム濃度が100uMでは伸展刺激による形態変化が起こることを示しているが細胞内カルシウムを均一に上昇させる目的でionomycinを加え細胞内カルシウム濃度も100uMにした。これはFura2を用いたカルシウム蛍光測光にて確認している。細胞内カルシウム濃度をこのようにして均一に100uMにしたとき(かなり高い濃度で、伸展刺激によるカルシウム濃度上昇よりもはるかに高い濃度)でも伸展刺激により形態変化を惹起することができた。この実験結果は細胞内カルシウムの空間的分布に局所性がなくてもよいことを示唆している。しかし、細胞内カルシウムの上昇がないと形態変化は起こらないことから細胞内カルシウムの上昇は必要条件ではあるが十分条件ではない。現在、細胞内カルシウムイメージングを行い確認を行っている。 (2)接着斑蛋白質チロシンリン酸化の空間的不均一性 細胞に伸展刺激を与え固定後、抗リン酸化チロシン抗体にてチロシンリン酸化蛋白を検出した。我々の研究から接着斑蛋白が強くチロシンリン酸化を受けることを示している。今回免疫染色により、接着斑に一致して抗リン酸化チロシン抗体に染色される部位が認められた。面白いことにその部位は伸展方向とは垂直方向、すなわち細胞が伸びていく方向の接着斑に強く認められた。
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