研究概要 |
心筋虚血時には細胞内外に脂質中間代謝体が蓄積する.これらは親水基と疎水基をもつ両親媒性物質である.本研究では疎水基側鎖の異なる脂質中間代謝体を用いて,モルモット心筋に対する作用を比較検討した.コラゲナーゼ処理にてモルモット心室筋細胞を単離し、パッチクランプ法によりナトリウム電流(I_<Na>)記録した.短鎖(C_3)の脂肪酸エステルpropionylcarnitine(50-500μM)はI_<Na>を抑制しなかったが,中鎖(C_8)の脂肪酸エステルoctanoylcarnitine(50-500μM)は高濃度(500μM)でのみI_<Na>を抑制した.また,長鎖(C_<12>)の脂肪酸エステルpalmitonylcarnitine(5-50μM)は濃度依存性にI_<Na>を抑制した.すなわち脂肪酸側鎖が長いほどI_<Na>抑制作用が強くなることが判明した.Palmitoylcarnitineは側鎖のpalmitoyl基が親水基のcarnitineとエステル結合している.一方,血小板活性化因子(PAF)のリゾ体であるlysoPAFはエステル結合しないC_<16>の疎水基側鎖をもつ.モルモットの右心室灌流標本を作製し,心基部を3Hzで刺激しながら活動電位と収縮張力を記録し,lysoPAF(10μM)を添加すると収縮張力が約30%減少したが,活動電位はほとんど変化しなかった.このlysoPAFによる収縮張力減少がいかなる機序によるものか,今後さらに検討していく予定である.
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