オポッサム腎由来の培養近位尿細管細胞(OK)細胞膜には約90pSの内向き整流性K^+チャネルが存在する。Patch-clamp法のcell-attached patchでは、非刺激状態でこのチャネルの活発な開口が観察されるが、浴液にAキナーゼの特異的阻害剤であるKT5720(200nM)を添加するとチャネル活性が低下する。Inside-out patchでは、浴液にMg^<2+>が存在するとチャネル活性は徐々に低下し(rundown)、Mg^<2+>-ATPを添加することでチャネル活性が回復する。Mg^<2+>-ATP存在下のinside-out patchにおいてKT5720(200nM)の添加によりチャネル活性が低下すること、およびAキナーゼ(20nM)の添加によりチャネル活性が上昇することから、inside-out patchにおけるATPのチャネル活性化作用は細胞膜内側の膜結合性Aキナーゼによる蛋白燐酸化によるものと考えられた。 また、浴液10^<-6>MCa^<2+>存在下のcell-attached patchにおいて、イオノマイシンを添加し細胞内のCa^<2+>濃度を上昇させると、このチャネルの活性は著明に低下する。さらに浴液Mg^<2+>-ATP存在下のinside-out patchにおいて、Ca^<2+>濃度を10^<-6>Mまで上昇させてもチャネル活性は殆ど変化しないが、PMA(10μM)とCキナーゼ(1U/ml)の同時添加によりチャネル活性の低下が観察された。このことから、cell-attached patchにおける細胞内Ca^<2+>濃度上昇に伴うチャネル活性の低下は、Cキナーゼ活性上昇に伴う蛋白燐酸化によるものと考えられた。 以上より、OK細胞膜において観察されたATP依存性K^+チャネルは、Aキナーゼによる燐酸化部位とCキナーゼによる燐酸化部位を有し、これらの相互作用によりその活性が調節されている可能性が示唆された。
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