研究概要 |
慢性肺高血圧回復過程ラットの、長期一酸化窒素吸入後の内皮細胞依存性、非依存性弛緩反応を通して、長期吸入による外因性NOが、内因性NOS-NO系および血管平滑筋のNOに対する感受性にどのような影響を及ぼすか検討した。 (方法)ウイスターラットを10日間大気圧(10A)または1/2大気圧(10H)に暴露したのち、それぞれをNO暴露チャンバー(10ppmまたは40ppm)(NO2,0.12ppm,Saltzman法)またはコントロールチャンバーでさらに10日間飼育した。以上の2種類のNOに対して、それぞれ4群(10A/NO_-、10A/NO_+、10H/NO_-、10H/NO_+)計8群のラットから、ペントバルビタール麻酔下に左肺外動脈(EPA;外径1.4-1.6mm)と左肺内動脈(IPA;外径0.7-1.1mm)を摘出し、長さ2mmの輪状標本を作成した。95%air,5%CO2の混合ガスにて通気したKH液内で至適静止張力をかけ、PGF2αにて前収縮させた後、acetylcholine(Ach;10-^8-10-^4M)およびsodium nitro prusside(SNP;10-^9-10-^5M)による等尺性張力変化を記録した。 (結果)EPAのNO 10ppm吸入において、10A/NO_-、10A/NO_+ではどちらもAch,SNPに対して用量依存性の弛緩反応を示し、両者の間に有為差は認められなかった。10H/NO_-,10H/NO_+では弛緩反応は全濃度において著明に抑制され、両者間に有為差は認められなかった。これらのことは、EPAの40ppm吸入でも同様であった。IPAについても同様に、両濃度において、両群に有意差は認められなかった。 (結論)以上よりNO吸入(10日間10または40ppm)は、正常血管および慢性肺高血圧回復過程における肺血管での内因性NOS-NO系および血管平滑筋のNOに対する感受性に影響を及ぼすことはないことが示唆された。
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