研究概要 |
本研究では、血管内皮細胞より産生放出される血管弛緩物質の一つである内皮細胞由来過分極因子(EDHF)の本体が、アラキドン酸カスケードの一つであるチトクロームP-450誘導体であるか否かを詳細に検討した。エーテル麻酔下に摘出したwistar ratの腸間膜動脈を摘出し、膜電位変化を微小電極法により測定し、EDHF反応を検討した。チトクロームP450阻害薬の一部はEDHF反応を抑制したが、その薬剤は何れも非特異的にカリウムイオンチャネルを抑制し、抑制作用機序とチトクロームP450阻害作用とは無関係であるとの結論となった。チトクロームP450に特異的な阻害薬はEDHF反応に何ら液を及ぼさなかった。次に、エンドトキシン処置ないしはSNP投与によりチトクロームP450活性が低下した状態ならびにphenobarbitar処置によりチトクロームP450活性が亢進した状態におけるEDHF反応を検討したが、特に変化は認められなかった。さらに、アラキドン酸の膜電位およびEDHF反応に対する影響そ検討したが影響はほとんど認められず、また、直接的にP450誘導体のひとつである11, 12-EETの膜電位に対する影響およびその標的イオンチャネルを検討したが、11, 12-EETがATP感受性カリウムイオンチャネルを開口するのに対し、EDHFはATP感受性カリウムイオンチャネル以外のカリウムイオンチャネルを開口し膜電位を過分極させた。以上より、ラット腸間膜動脈におけるEDHF反応はP450誘導体を介した反応である可能性は低いとの結論となった。
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