研究概要 |
エンドセリンETB受容体アゴニストであるAla-ET-1(40pmole)をラット線条体へ注入する事によりGFAP陽性細胞数すなわち活性化アストロサイトが増加する事を明らかにした。この作用は、注入後1-2週で最大となり対照に比べ約150%まで活性化アストロサイトは増加した。ET_B受容体のアンタゴニストBQ788(24nmole/day)の共存は、このAla-ET-1の作用を有意に減弱させた。活性化アストロサイトの発生機構には、ミクログリアおよび傷害された神経細胞から放出される因子が関与する事が知られているが、Ala-ET-1の注入は、線条体でのミクログリア発生および神経細胞の脱落には影響しなかった。これらのことはアストロサイトに存在するET_B受容体の直接の刺激が、アストロサイトの活性化を惹起する事を示唆するものである。以上の結果は、近く論文公表される(Eur.J.Neurosci.,in press)。エンドセリンは、脳傷害時にその量が増加することが知られている。この結果に引き続き、傷害時に現れる内因性エンドセリンのアストロサイト活性化への作用を、ラット大脳皮質外科的傷害モデルを用い検討した。ラット大脳皮質へカミソリ刃を刺入した場合、3-7日後では傷害部位のエンドセリン-1免疫反応性は非処置の約3倍になった。またこの傷害によりGFAP、vimentin陽性細胞および活性化したミクログリアが生じた。BQ788の脳室への持続注入は傷害によって現れるGFAPおよびvimentin陽性細胞数の増加を抑制した。一方、ET_A受容体のアンタゴニストであるFR137319はアストロサイトの活性化に影響しなかった。これらの結果は、脳傷害時に現れるエンドセリンのアストロサイト活性化への関与を示すものである。
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