パルヴォウイルスのパリンドローム構造は、完全鎖長の状態では不安定であるためcDNAクローンからサブクローニングすることが困難であった。そこで、パリンドローム構造領域のみをオリゴヌクレオチドから合成することにした。 ヒト・パルヴォウイルスB19ゲノムのパリンドローム構造およびその周辺の塩基配列を基にして20個のオリゴヌクレオチドを合成し、5'末端および3'末端パリンドローム構造とマルチクローニングサイトを持つDNA断片を調製した。このDNA断片をM13ファージ複製開始点を持つプラスミドに挿入した。構築したプラスミドは、M13ヘルパーファージを使って単鎖DNAにし、5'末端および3'末端部分に結合する合成オリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせて制限酵素MscIで切断した場合に、細胞内で自律増殖可能と考えられるパルヴォウイルスゲノム様の単鎖DNA断片が分離できるように設計した。パリンドローム構造は不安定であるため構築したプラスミドの宿主大腸菌には突然変異が起こりにくいSURE-2株を用いた。 実際にパルヴォウイルスベクターをヒト培養細胞へ導入する場合、DNA断片の複製効率や安定性などの点から単鎖DNAが良いか二本鎖DNAが良いかの問題がある。この問題を解決する目的で構築したプラスミドにSV40プロモーターにより発現可能なホタル・ルシフェラーゼ遺伝子を挿入した。現在、このプラスミドとHeLa細胞を使って、ヒト培養細胞への導入効率と細胞内での自律増殖能および安定性の解析を行なっている。
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