研究概要 |
昨年度クローニングに成功した新規PKCε結合タンパク質、εBP,の生理的役割を明らかにすべくさらに研究を進め、以下のような結果を得た。1.大腸菌で発現、精製したεBPタンパク質を用いたin vitroの実験から、εBP上のPKCεリン酸化部位がそのBTBドメインにはなく、それよりC末端側にあることが明らかとなった。2.COS細胞内に高発現したεBPおよびPKCεキナーゼドメインが核内粒子構造に共局在するという現象を利用して、BTBドメインに続くα-helical coiled coil構造をとることが強く示唆されている80アミノ酸を含む領域がPCKとの細胞内相互作用に重要であることを明らかとした。この結果は、1.で述べたin vitroリン酸化の結果と一致する。3.各種組織のDNAライブラリーに対してPCRを行いサザンブロットによる解析を行ったところ、クローニングの過程から予想されていた以上の組織依存的な多様な可変スプライシングとそれに由来するアイソフォームの存在が明らかとなった。4.最新の遺伝子データベースの解析から、εBPのBTBドメイン周辺の構造は細胞膜の裏打ち構造タンパクと考えられているkelchと最も相同性の高いことがさらに強く示唆された。またこの領域は雌配偶子の減数分裂異常変異体から同定された線虫のmel-26 gene産物とも相同性が高いこともわかった。BTBドメインはタンパク質間の会合を担うドメインとして近年注目されているが、このドメインを含むタンパクには転写抑制因子として働くものと、構造タンパク質として働くものがある。今回の結果は、εBPが後者のグループの一員として働いている可能性を示している。一方、εBPアイソフォームのあるものは特徴的な核内粒子様構造に局在することから、他のBTBドメイン核タンパクとヘテロな会合を起こすことによってによってそれらの転写抑制機能の制御に関与している可能性も考えられる。
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