研究概要 |
ヒトに強い異種抗原となる糖鎖であるα(1,3)ガラクトース末端を有するマウス培養細胞株(F2細胞)の各種糖転移酵素の発現を遺伝子工学的に制御し、その効果を調べた。1.糖転移酵素発現ベクターの作成:動物細胞発現ベクターであるpRc/CMVベクターに(1)マウスα(1,3)Galactosyltransferase(以下α(1,3)GalT)cDNAの5'非翻訳領域〜ゴルジ膜貫通ドメイン約0.5kbをAntisense方向に組み込んだもの。(2)ヒトα(2,3)Sialytransferase cDNA ST3N,ST4,ST30の翻訳領域全長をSense方向に組み込んだもの。(3)ヒトα(1,2)Fucosyltransferase cDNAの翻訳領域全長をSense方向に組み込んだもの。(4)マウスα(1,3)GalTのの5'非翻訳領域〜ゴルジ膜貫通ドメインとヒトα(1,2)Fucosyltransferaseの活性部位のフュージョン蛋白(Sense方向でin-flameになる様に作成)を発現出来るものを作成した。2.F2細胞のトランスフェクタント細胞の作成と表面ガラクトース糖鎖の解析:上記発現ベクター及びControlとして空のpRc/CMVベクターをElectroporation法によりマウス細胞株(F2細胞)に導入し、G418耐性のstable transfectant細胞を作成した。得られたtransfectant細胞表面のガラクトース末端を有する糖鎖発現をガラクトース認識レクチン(GSI-B4)を用いたフローサイトメトリーにて解析した。その結果、(1)(2)(4)のtransfectant細胞ではガラクトース発現に軽度の低下を認めただけであったが、(3)のtransfectant細胞の中にはControlに対して平均蛍光強度が50%以下に減少したものが存在した。今回、調べた中ではマウス細胞表面ガラクトース発現を完全に、抑制し得るものは認めなかった。今後はこれらの効果の差異が見られる原因を明らかにすると共に、発現をどの程度制御すれば臨床応用可能かについて検討することが必要と思われた。
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