これまで乳腺腫瘍病理組織診断学においては悪性の組織像は良性に比べ、腫瘍細胞が均一に配列する傾向がみられることがいわれているが、主観的、定性的に述べられているだけで、客観性に乏しかった。また隣接する細胞の配列の関連性を解析するには細胞膜を利用するのが良いが、細胞膜は通常の組織標本では不明瞭なことが多い。我々は細胞の配列の解析に以下の新たな方法を考案し、解析を行った。【方法】症例は千葉大学医学部付属病院の乳腺手術標本から良性群15例、悪性群15例を使用した。病変部のパラフィン包埋5μ切片からHematoxylin-Eosin染色標本を作製した。病変部分からさらに壊死や間質の最も少ない部分を選びハイビジョン顕微鏡カメラから画像解析装置に入力した。入力は1000×1000pixelで格子密度は0.2μmで行った。画像から核を選び出し、2値化した。さらにこの画像から仮想細胞境界を構築するため核周囲の領域を隣接した核と接しない(2pixel以上の領域がある)場合、像を1dotずつ拡張する操作を繰り返し行った。この処理で、仮想細胞境界が1dot幅の曲線による多角形地図状の像を得た。この像から各々の図形の隣接する図形の数を数え(50核)、多様性の比較のため、SDを算出した。【結果】悪性群では核の配列が均一に分布する傾向がみられ(SD=1.03±0.13)、一方良性群では配列は不均一で(SD=1.19±0.13)、有為な差がみられた(p<0.03)。【考案】この方法は乳腺以外の組織においても利用可能であり、組織像の評価に客観性、定量性をもたせるとともに、将来のコンピュータによる組織診断にも応用可能と考えられる。
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