研究概要 |
さきに申請者らが発見したSAA1γがAA-アミロイドーシスの危険因子であることが疫学的により確かとなった。さらにSAA1遺伝子分布の人種差から,SAA1γがとりわけ日本人にとって重要な因子であることが示唆された。 1.SAA遺伝子多型の日本人と白人における遺伝子頻度 SAA1の3種類の対立遺伝子の頻度は,日本人(α32%,β31%,γ37%;n=103),オーストラリア・コーカシアン(α73%,β23%,γ4%;n=150)で,両群間で有意(p<0.001)に異なり,後者ではSAA1γは非常に稀であった。SAA2の2種類の対立遺伝子は,日本人(α85%,β15%),オーストラリア・コーカシアン(α86%,β14%)で,両群間に有意差はなかった。 2.アミロイドーシスとSAA遺伝子多型 健常者群(n=103),RA患者一般群(n=147),およびRAに合併したAA-アミロイドーシス患者群(n=45)の3群(全て日本人)で比較した。SAA1については,健常者群とRA一般群との間では有意差はみられなかったが,健常者群もしくはRA一般群とアミロイド群との間では,対立遺伝子および遺伝子型頻度ともに明らかな有意差(いずれもp<0.001)を認め,アミロイド群でγアリルが高頻度(69%),遺伝子型でもγγホモ型が特に高頻度(53%)であった。オッズ比は,少なくとも1つγアリルを持つ場合は4.2(95% CI 1.8-9.7),γγホモ型の場合は9.1(同3.8-22.1)となり,RA患者がγγホモ型の場合(RA患者の約11%)は他よりアミロイドーシス発症の可能性が約9倍も高いと推定された。SAA2も同様に比較したが,いずれの群間でも有意差はみられなかった。 現在,疫学調査の継続・発展に加えて,組み換えタンパクやトランスジェニックマウスを用いた試験管内および個体レベルでの実験的裏付けを目指している。
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