ヒトからのサンプルは、研究目的に使用する事に同意を得た後採取した。 1.好酸球におけるgp91-phox遺伝子転写開始点の解析。 健常人血液由来の好中球と単球、及び腹水透析患者の腹水由来の好酸球よりRNAを単離し、オリゴ・キャップ法並びにRNaseプロテクションアッセイ法にてそれぞれの細胞種におけるgp91-phox遺伝子転写開始点を比較したところ、好酸球における本遺伝子の転写開始点は好中球、単球と同様の位置にマルチプルに存在する事が示された。すなわち、好酸球が他の細胞種とは全く異なった遺伝子領域ではなく同様の部位をプロモーターとして利用している事が明らかとなった。 2.好酸球特異的転写調節に関与する遺伝子領域の同定。 先の結果より好酸球におけるgp91-phoxプロモーターもこれまで知られていたエクソン1の5'フランキング領域に存在する事が示されたので、これまでの情報を基に様々なgp91-phox遺伝子上流領域を持つルシフェラーゼレポーター遺伝子を作成した。そして、それらの組換え体を好酸球性細胞株及び好中球性細胞株にトランスフェクションし、各種細胞でのルシフェラーゼ活性の比較検討を行った。その結果、好酸球特異的な正の転写調節に関与する可能性の高い領域を見出した。 3.好酸球特異的遺伝子転写調節領域に結合する因子の解析。 これまでの研究の結果、好中球、単球では-50から-60の領域に転写調節に重要な転写因子が結合する事を見出していたので、ゲルシフトアッセイ法を用いて好酸球において解析を行ったところ、本領域に結合する転写因子は存在せず、好酸球ではこの領域を転写調節に利用していない事が明らかとなった。この事は本領域に変異を持つCGD患者において好酸球のみが正常レベルのgp91-phoxを発現しているという事実と一致している。
|