研究目的 以前in vitroでヒト肝癌細胞株を用いたdeletion type Hepatocyte Growth Factor (dHGF) の細胞増殖あるいは組織形態に及ぼす影響とc-metタンパクの発現を検討し、dHGFの肝癌細胞に及ぼす影響にはいくつかのバリエイションが存在する事を示した。本研究ではin vivoでdHGFの肝癌細胞の増殖、転移に及ぼす影響を観察検討することを目的として実験を行った。 材料と方法 1)in vitroでdHGF添加により細胞増殖が抑制あるいは促進された肝癌細胞株および細胞増殖に無影響で細胞分散傾向が観察された3つの異なる肝癌株をSCIDマウスに移植し腫瘍成着後、dHGFの連日2週間の投与を行った。投与期間、換算腫瘍重量から腫瘍増殖曲線の作成およびマウス体重の測定を行った。 2)dHGFの移植腫瘍および担癌マウス組織に及ぼす影響について2週間のdHGF投与後に肝癌移植担癌マウスを屠殺し、肝、腎重量の測定と供に腫瘍組織も含め各臓器の組織学的検索を行った。 3)dHGF投与開始前後の全身状態の指標としてヘマトクリット値を測定した。 結果および考察 in vitroで観察されたdHGFの肝癌細胞の増殖、細胞形態変化、浸潤転移促進への直接的な影響はin vivoでは見られなかった。しかしdHGFの投与により、その濃度依存性に肝腎重量の増加、癌細胞増殖に伴うるいそうあるいは貧血の進行が抑制された。これらのことはdHGFの投与による肝腎重量の増加が血漿蛋白増加などに作用し担癌マウスに有益に作用すると供に、胆癌マウスの全身状態に影響すると考えられる種々の炎症性サイトカインの発現をdHGFが間接的に抑制している可能性が考えられる。今後は更に、これらのdHGFの胆癌マウス全身状態改善の機構についての検討を加え臨床治療薬としての応用を探求していく事が必要と考えられる。
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