研究概要 |
LPS応答の細胞内シグナル伝達経路を明らかにすることを目的にマクロファージ細胞株J774.1細胞(CD14^+)およびそのCD14発現欠損変異株であるJ7.DEF.3細胞(CD14^-)を用い、CD14依存性、非依存性でのマクロファージのLPS応答性の差異を検討してきた。これまでに、LPS刺激マクロファージからのNO産生およびIFN-β産生にはCD14依存性が認められること、また、CD14依存性NO産生にはIFN-βの産生が必須であることを明らかにしてきたが、本年度は、マクロファージ細胞内シグナル伝達がCD14陽性、陰性細胞間でどの様に異なるのかについて検討した。 CD14^+細胞およびCD14^-細胞をLPSにて刺激し、細胞内でチロシンリン酸化の亢進を受けるタンパク質を抗リン酸化チロシン抗体(PY-20)、また活性化MAPキナーゼを抗リン酸化MAPキナーゼ抗体を用いたイムノブロットによりそれぞれ検出した。CD14^+細胞ではLPS刺激後40kDa近辺の数種のタンパク質に顕著なチロシンリン酸化の亢進が認められた。一方、CD14^-細胞では、LPS刺激によるTNFの産生は十分認められるのにも関わらず、LPS刺激によるこれらのタンパク質のチロシンリン酸化の亢進は、CD14^+細胞に比べ、著しく弱かった。これらのチロシンリン酸化タンパク質は、抗MAPキナーゼ抗体、抗リン酸化MAPキナーゼ抗体を用いたイムノブロットによりMAPキナーゼ(Erk 1,Erk 2)と同定された。さらにMAPキナーゼファミリーであるp38のリン酸化についてもErk 1,2と全く同様の挙動を示した。これらの結果から、CD14非依存性のLPSシグナル伝達経路では、MAPキナーゼ系の活性化を介さないTNF産生の誘導が可能であることが示唆された。現在、両細胞間でのNF-κB活性化の差異を検討しているが顕著な差は認められず、CD14非依存性のLPSシグナル伝達経路でも十分にNF-κB活性化を引き起こせるものと考えられる。
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