研究概要 |
ライム病ボレリアの菌体表層には数種類の主要表層抗原(Osp)が存在している。この内OspCについて、ボレリア感染マウスでは感染初期からOspCに対する抗体価が高レベルであること、病原性株でのみOspCが発現していること、OspCの発現量低下は遺伝子の転写レベルに起因すること、さらには病原性株と非病原性株ではOspC遺伝子(ospC)プロモーター領域近傍の塩基配列に相違がないことから、OspCが病原因子の一つであること、ospCにトランスに働く転写制御因子が存在することが考えられた。そこで、ospCの発現調節に関与する因子を検出するために、ospCのプロモーター上流を含む領域をリポーター遺伝子に結合したプラスミド(pHK1,pHK2)を構築し、これにプラスミドpSU18に構築したボレリアゲノムライブラリーを宿主大腸菌に追加、レポーター活性から、ospCの発現調節に関与する因子を含むと考えられるボレリア由来のDNA断片2,185bpを得、塩基配列を決定した。さらに大腸菌中において、このDNA断片によりospC転写活性が上昇するためには、ospC上流に存在する重複逆位繰り返し構造を含む187bpが必要であることを明らかにした。今後はゲルシフトアッセイ、フインガープリンテイングなどの方法により、このDNA断片に含まれている転写制御因子の機能をより詳細に解明する。
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