研究課題/領域番号 |
08770216
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研究種目 |
奨励研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
ウイルス学
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
稲城 玲子 大阪大学, 医学部, 助手 (50232509)
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研究期間 (年度) |
1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
1996年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
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キーワード | kaposi sarcoma associated herpesvirus like DNA / KSHV / ヒトヘルペスウイルス8 / Bowen病 / 有棘細胞癌 / ガンマヘルペスウイルス / 増殖性皮膚疾患 / 発癌ウイルス |
研究概要 |
目的と意義:1994年、Chang等はAIDS患者のカポジ肉腫病変部位から未知のヘルペスウイルス様DNA断片(KSHV)を発見し、8番目のヒトヘルペスウイルス(HHV-8)の存在を明らかにした。 これまでに、HHV-8はカポジ肉腫の病因に深く関与していることが示唆されているが、KSHVの塩基配列が発癌性を有するガンマウイルス亜群(herpesvirus saimiri,Epstein-Barr virus)と相同性を示すことから、他の疾患、特に増殖性疾患との関連性も興味深い問題である。今回我々は、HHVー8の病原性をより詳細に解析する目的で、カポジ肉腫以外の増殖性皮膚疾患とHHV-8との関連性について検討を行った。 材料と方法:増殖性皮膚疾患【有棘細胞癌(SCC)、Bowen病(BD)、紫外線角化症(AK)、Peget病(PD)】病変部位、非増殖性皮膚疾患【慢性皮膚炎、限局性強皮症、表皮膿疱】病変部位、あるいは正常皮膚のパラフィン包埋切片からDNAを抽出し、PCR法、及びsouthern hybridization法にてHHVー8の検出を行った。さらに、得られたPCR産物の塩基配列を決定し、HHV-8の多様性についても検討を行った。 結果及び考察:正常皮膚(0/5名、0%)からはHHVー8が検出されないのに比し、BD(20/28名、71.4%)、SCC(7/14名、50.0%)からは高率にウイルスDNAが検出された。また、各種非増殖性皮膚疾患(2/12名、16.7%)やAK(39名、33.3%)、PD(1/6名、16.7%)からもHHVー8は検出されたが、その割合はBDやSCCに比べ低値を示した。さらに、BD由来DNAを用いて得られたPCR産物の塩基配列を比較したところ、数カ所の核酸変異(一部はアミノ酸置換を伴う)が認められ、HHV-8DNAの多様性が示された。以上の結果から、HHV-8は少なくとも一部の増殖性皮膚疾患と関連性を有することが示唆された。これまでSCCやBDにおいては、ヒトパピローマウイルスの発癌性や癌抑制遺伝子p53の不活化等が病因因子として報告されてきたが、これらの結果からHHV-8が新たな病因因子として、発癌の作用機序に関与する可能性を示唆している。
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