研究概要 |
1.C型肝炎ウイルス非構造蛋白質4Aを恒常的に発現する細胞(NS4A発現細胞)およびコントロールベクターのみを導入した細胞(pH8細胞)を用いて,以下の結果を得た。 (1)NS4A細胞に,ヌードマウスにおける造腫瘍性は認められなかった。 (2)NS4A細胞とpH8細胞を比較し,In vitro増殖能,アポトーシスの出現,c-fos mRNAの誘導において,明らかな違いは認められなかった。 以上より,NS4Aの細胞機能に及ぼす影響は明らかでなかった。よって、NS4Aと結合し,密接な関係にあるNS3について,同様の検討を行った。 2.C型肝炎ウイルス非構造蛋白質3を恒常的に発現する細胞(NS3発現細胞)およびpH8細胞を用いて,以下の結果を得た。 (1)NS3細胞は,pH8細胞に比べて,アクチノマイシンDによるアポトーシスに対して,抵抗性であった。 (2)アクチノマイシンDによるp53蛋白の誘導は,NS3細胞の方が,pH8細胞に比較し弱かった。 これらの事より,NS3蛋白は,p53蛋白と相互作用し,アポトーシスを抑制する可能性が示唆された為,以下の実験を行った。 3.NS3およびp53を一過性にHeLa細胞に発現し,それぞれの細胞内局在を観察し,相互作用について検討した。 (1)NS3単独発現の場合,NS3は,細胞質,核に同程度存在したが,p53と共発現させると,両者共に核内に局在した。 (2)この現象は,アミノ末端1/4を欠くNS3蛋白では,起こらなかった。 これらの結果より,p53はNS3のアミノ末端1/4と結合し,NS3を核内へ集積させる可能性が示唆され,現在,p53とNS3の結合とp53の機能に対するNS3の影響を検討しているところである。
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