研究概要 |
レトロウイルスのプロウイルス様の遺伝的因子は、広く脊椎動物のゲノムに存在しており、内在性レトロウイルスと呼ばれている。私は、ヒト内在性レトロウイルスのK-10と呼ばれるクローン(HERVK-10)が、機能を有する組み込み酵素(HERVIN)をコードしている事を明らかにした。HERVINの組み込み活性をin vitroの組み込みアッセイにて調べたところ、HERVK-10のLTRを基質とした場合のみならず、1型ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1)やトリ白血病ウイルス(ALV)のLTRを基質とした場合にも、明らかな活性を示した。HERVINがいかなるメカニズムで、三種類ものLTR配列を認識して組み込み反応を遂行するのかを解明するため288アミノ酸残基から成るHERVINのカルボキシル端末の部分の塩基性のアミノ酸(リジン(K)、アルギニン(R))がDNA結合に関与していると推測されたので、これらのアミノ酸のうち265R、268Kを中性のアミノ酸アラニンに替えたようなHEERVIN遺伝子の変異体を作製した。変異体タンパク質は、全て、大腸菌で、マルトース結合タンパク質との融合タンパク質として合成せしめ、さらにアミロースレジンカラムによるアフィニティカラムクロマトグラフィーにて精製した。組み込み活性は、我々が既に開発した、二本鎖オリゴヌクレオチドを用いた、in vitroのアッセイ系を用いて測定した。基質として、HERVK-10,HIV-1,ALVの三種類のLTRを用いたが、二つの変異体は、全く活性を持たなかった。
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