研究概要 |
我々は炎症性サイトカインであるIL-1,TNFやLPS刺激時におけるIL-8遺伝子発現機構を明らかにする目的で、同遺伝子発現に重要なNFκBの活性化機構を調べている。我々はヒト単球系細胞株THP-1の細胞抽出液中にIκBαに会合してリン酸化するIκBα会合キナーゼを同定し,そのリン酸化部位がIκBαのC末端領域酸性ドメインのSer/Thr残基であることを見い出した(Kuno et al.J.Biol.Chem.1995)。その後Barroga C.F.(PRONAS,1995),Lin R.(Mol.Cell.Biol,1996),McElhinny J.A.(Mol.Cell.Biol.,1996)らの複数のグループにより、カゼインキナーゼIIがIκBαのC末端領域の酸性ドメインのSer/Thr残基を構成的にリン酸化すると報告された。一方我々はこれまでTHP-1細胞由来のIκBα会合キナーゼをRedセファロース、DEAEカラム等を用いて部分精製を行ってきたが、今回IκBα会合キナーゼ活性がヘパリンHPLCカラムで2つのピークに分離されることを見い出した。また抗カゼインキナーゼII抗体を用いたウエスタンブロット解析の結果から、ヘパリンカラムの低塩濃度で溶出されるピークはカゼインキナーゼIIであるが、高塩濃度で溶出されるピークはカゼインキナーゼIIとは異なるIκBα会合C末端キナーゼであることがわかった。THP-1細胞粗抽出液におけるIκBα会合キナーゼ活性は、無刺激である程度検出されるものの、LPS刺激時に顕著に増加する。これは構成的な活性を示すカゼインキナーゼIIと、LPS刺激によりその活性が誘導される我々の同定したIκBα会合C末端キナーゼの総和と考えられる。IκBα会合C末端キナーゼについては現在さらに精製を進めており,今後そのcDNAのクローニングとアンチセンス法等による不活性化を行い、NFκBの活性化における役割を調べる予定である。
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