研究概要 |
BALB/c雌性マウスにそれぞれTDI,HDI,清浄空気吸入曝露をおこない、曝露24時間後に気管支肺胞洗浄(BAL)を行い、細胞数、細胞分画、また、CL-ELISAによりインターロイキン4および6を測定した結果、BALF中の細胞は両曝露群とも好中球が多数認められたが、その程度はTDI曝露群がHDI曝露群を上回った。曝露翌日のBALF中のサイトカインは、IgE産生に深く関与すると考えられているIL-4がHDI曝露群で減少を示す一方、炎症性サイトカインであるIL-6がHDI,TDIいずれの曝露群においても統計学的には有意(P<0.05)ではないものの低下傾向を示した。また、曝露14日めに採血およびBALを行い、血清中、BAL液中の総IgEをCL-ELISAにより測定した結果、血清中IgEはTDI曝露群で著増が認められた。また、BALF細胞ではHDI曝露群の一部のおいてリンパ球優位の所見が認められた。当初、HDI曝露においてはその細胞傷害性の強さによる炎症性変化に伴い、TNF-alpha,IL-6等の炎症性サイトカインが上昇し、これがIL-4およびIgE産生を抑制すると考えていたが、今回の結果はHDIは直接IL-4産生細胞に作用することを示唆するものであった。イソシアネート曝露作業者における生体中サイトカインのバイオマーカーとしての可能性については、これまでの研究においてコントロール群における日内変動および他の影響因子についての基礎実験を行い、個人内変動は個人間変動に比較し小さいことが判明した。今後、この結果を考慮し、イソアシアネート曝露とサイトカインとの関連を検討していく予定である。
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