現代の産業労働の特色のひとつとして作業の単調化による単一筋群の化しようとその局所への負担の増加がある。こうした産業衛生的な課題に応え改善を進めるためにはこれまでとらえられなかった微細な疲労の初期変化を測定できる評価解析の手法が求められている。そこで、筋疲労現象の解析に用いるための非侵襲的に測定できる表面電極法を用いた筋繊維伝導速度の手技の確立を目指し、再現性よく測定できる方法を検討した。方法としては、被験者実験を行って僧帽筋を用いて最大筋力10%、30%程度の当尺性収縮を持続させながら腕の位置等を変化させ安定した測定が行える電極位置の検討を行いなった。さらに同じ状態で静的収縮を持続させて筋線維伝導速度を連続的に測定してその変化を調べた。測定は多点表面電極法を用いて行い、実験中は被験者の自覚疲労感を同時にモニターし、主観的な疲労度と筋線維伝導速度の変化の関連に注目して解析を行った。その結果、安定した筋線維伝導速度の測定には電極の位置の選択が影響を及ぼすこと、また、今回行った実験条件下では主観的な疲労度と多点表面電極法で測定された筋繊維伝導速度との間に安定した一定の関係を見出すことはできなかった。今後の課題として電極位置の決定をより簡便迅速に行って安定した測定を行える方法が開発できれば、多点表面電極法による筋繊維伝導速度は疲労の微細な初期徴候を評価するための有力な手段となりうる可能性が示された。
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