研究概要 |
末梢神経毒性をもつヘキサンの代謝物のなかで、これまで注目されなかった2,5-ジメチルフランの毒性を以下のように検討した。 1.Sprague Dawley系雄性ラットを3群に分け、それぞれ2,5-ジメチルフラン(DF)295mg/kg/day、ヘキサンによる神経毒性の原因代謝物とされる2,5-ヘキサンジオン(HD)350mg/kg/day、および生理食塩水を週5日5週間にわたり皮下投与し、毎週体重、尾の運動神経伝導速度および遠位潜時を測定した。投与終了後灌流固定を行い、腎、肝、精巣の光顕標本および尾神経、脛骨神経、坐骨神経の解きほぐし標本を作製した。その結果、DF投与群で対照群に対して有意な体重および伝導速度の低下が観察されたが、HD投与群に比べるとその低下の程度は軽度であった。神経解きほぐし標本では、伝導速度の低下に対応する軸索及び髄鞘の変性が認められた。DF投与群の精巣にはHD投与群にみられる強い精細管変性は認められなかったが、HD投与群でおおむね正常であった腎臓については近位尿細管および間質を中心に変性がみられた。 2.生後3〜4日齢のSprague Dawley系ラットのシュワン細胞および細胞および皮膚線維芽細胞を培養し、5種のヘキサン代謝物(2-ヘキサノール、2-ヘキサノン、HD、DF、γ-バレロラクトン)の毒性を[^3H]-チミジンの細胞への取り込みを指標に検討したところ、DFはHDを含む他の代謝物に比べて著しく強い細胞毒性を有することが明らかになった。 3.Sprague Dawley系雄性ラットにDFを皮下投与し、4時間後に血中のDF関連物質を抽出しガスクロマトグラフにより測定したところ、DFおよびHDが検出された。以上1〜3より、DFは強い細胞毒性を有し、生体において腎毒性の他2,5-HDに比較して軽度の神経毒性を有することが明らかになった。
|