研究概要 |
平成8年度は、肝がん患者の血液検体収集と生活習慣調査を行い、一部について遺伝子多型の解析を行った。症例は鹿児島県内の一つの医療機関に入院した原発性肝がん患者30名で、対照は患者と性、年齢をマッチングさせた健常人60名である。喫煙、飲酒等の生活習慣に関する調査は主に自己記入方式により行い、解析を条件付きロジステイックモデルによる多変量解析で行った。DNA検体を用いて芳香族炭化水素の代謝に関わる生体内酵素(CYP1A1,GSTM1)の遺伝子多型性をPCR-RFLP法を用いて解析し、これらの遺伝子多型のオッズ比を求めた。 その結果、喫煙に関しては症例と患者で有意な差は認めず、飲酒については症例の方が飲酒の頻度が有意に多いという結果(p<0.05)を得たが、一週間の摂取量では統計学的な有意差を認めなかった。肝がんではCYP1A1とGSTM1の遺伝子多型に関する研究報告は少なく、肝がんの発生に宿主の遺伝的背景がどの程度関与しているのかは不明である。これらの遺伝子多型の分布について症例と対照で比較したが、有意な差は認めなかった。本来ならば、喫煙者の中でも特にIight smokerに限定して解析を行うべきであったが、例数が少なかったため本年度は行っていない。
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