研究概要 |
変形性股関節症(hip osteoarthritis :以下変股症)は、股関節に非炎症性、進行性に骨形成性の変化をきたし,加齢とともに徐々に進行する疼痛によって、日常生活に著しい障害をきたす疾患である。欧米諸国では股関節内構造に欠陥がなくして発症する一次性股関節症が多く、特に英国では年間最大39000hipが股関節形成術の対象となるなど、大きな公衆衛生学的問題となっている。しかしわが国ではほとんどが先天性股関節脱臼および臼蓋形成不全に続発する二次性のものであると考えられているため、発症要因にせまる疫学的アプローチは皆無であると考えらる。申請者は、わが国における変股症の発症要因を明らかにすることを目的として症例対照研究を実施した。まず症例としては、平成6年において45歳以上で、整形外科医により日本整形外科学会変形性股関節症のエックス線診断基準の0または1度と診断された者とした。この症例に1例に対し、症例の住所における住民台帳より性、年齢(±5歳)をマッチした住民を1例ランダムに選び対照とした。調査方法は対面聞き取り調査とした。調査項目は、英国研究者と共同開発したもので、職業、移動手段、スポーツ、趣味、たばことアルコールの摂取頻度、関節障害の有無、運動障害の有無、既往歴、月経状況など約60項目からなる。 1996年12月31日現在で総計64組(男3組、女61組)の症例・対照ペアの聞き取り調査が終了した。平均年齢は症例61.95歳、対照62.69歳であった。症例と対照の平均値を比較すると、体重は症例52.0kg,対照53.69kgと対照の方が重い傾向にあったが、BMIでみると、症例24.6、対照24.3とほぼ同様であった。いままでに従事した仕事の数は症例2.3、対照2.0と症例の方が多かった。
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