神奈川県内の某運輸系企業において1995年の成人病健診を受診した30歳以上の男性社員1803名を対象とした。虚血性心疾患、脳卒中、悪性新生物の既往歴のある者、胃切除者、高血圧または甲状腺機能亢進症で服薬治療中の者、および採血前数時間以内に食事を摂取した者を除外した結果、解析対象者は1403名となった。 コホート対象群としては既に糖尿病に罹患している者を除外する必要があるが、本研究における血清インシュリンに影響する要因の検討に際しては、横断研究であることから、糖尿病有病者も含めて解析を実施した。 血清インシュリンに影響を与える可能性のある要因として、年齢、BMI、ウェストヒップ比、収縮期血圧、拡張期血圧、空腹時血糖、総コレステロール、中性脂肪、HDLコレステロール、糖尿病の既往歴および家族歴、飲酒習慣、喫煙習慣、運動習慣、コーヒー摂取を選択し、各要因の血清インシュリンへの影響をステップワイズ重回帰分析により検討した。解析に際して、血清インシュリン、中性脂肪の2項目には対数変換を実施した。 その結果、以下の知見が得られた。 1) BMI、収縮期血圧、空腹時血糖、中性脂肪の4項目は血清インシュリンと正の関連を示した。 2) HDLコレステロールは血清インシュリンと負の関連を示した。 3) 年齢50歳以上では30歳代に比較して、糖尿病の既往歴が有る者は無い者に比較して、現在飲酒者は非飲酒者に比較して、週に1回以上習慣的に運動をしている者は運動をしていない者に比較して、それぞれ有意に血清インシュリンが低かった。 4) 他の項目と血清インシュリンとの間には有意な関連は認められなかった。
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