研究概要 |
本研究の目的は、喫煙者が禁煙することにともなう血圧、血清脂質、血糖などの心血管系疾患の危険因子の経時変化を明らかにすることである。対象は、某自治体に勤務する男性職員で、1988年度と1995年度の両健診を受診した者である。喫煙歴不明者を除き、1年禁煙者80名、2年〜3年禁煙者63名、4年から5年禁煙者56名、10年以上禁煙者343名、禁煙継続者1951名、非喫煙経験者687名について解析した結果、次の知見を得た。 1.7年間の体重増加が10キロ以上であったものは、現在喫煙者1.8%であるのに対し、1年禁煙者3.8%、2〜3年禁煙者6.4%、4〜5年禁煙者7.1%、10年以上禁煙者1.5%、非喫煙者2.6%であった。 2.7年間の収縮期血圧の変化は、現在喫煙者1.97(体重変化補正値2.20、以下同様)であるのに対し、1年禁煙者5.58(5.25)、2〜3年禁煙者4.52(3.90)、4〜5年禁煙者8.06(7.27)、非喫煙者5.28(5.18)であった。総コレステロールは順に、11.1(11.8),15.1(14.6),18.0(16.0),22.8(20.5),13.0(13.0)、HDLコレステロールは7.3(7.0),11.4(11.6),10.4(11.3),11.9(12.9),9.2(9.2)、対数中性脂肪は0.092(0.107),0.059(0.047),0.052(0.001),0.085(0.028),0.030(0.036)、空腹時血糖5.2(5.0)、11.0(11.1)、7.3(7.9)、5.3(5.9)、4.9(4.9)であった。 3.すべての禁煙者625名について、どのような因子が体重増加に関連しているかを検討したところ、年齢:1歳あたり-0.12(p<0.01)、88年体重:1キロあたり-0.05(p<0.01)、禁煙年数4〜5年:禁煙10年以上に対し1.4(p<0.05)、運動習慣:週2回以上0.78(p<0.05)であった。
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