研究概要 |
埼玉県下の某短期大学生を対象に自記式質問紙票調査を行い,中学生期における「いじめ」および「いじめられ」経験と現在の精神健康状態・ソーシャルサポートとの関連性を検討した。389名(男子61,女子326,不明2,平均年齢18.9±0.8歳)から回答を得た。「いじめ」に関する質問は,“欠点などをからかう"“意地悪をする"“足をかける・髪を引っぱる"“無視する"“悪口を言う"といった5つの具体的「いじめ」行動について,加害者・被害者・仲裁者・傍観者・参加者となった経験頻度をそれぞれ問うものであった。精神健康状態はState-Trait Anxiety Inventory(STAI)およびCenter for Epidemiologic Studies Depression Scale(CES-D)により測定し,ソーシャルサポートはSarasonらのSocial Support Questionnaire(SSQ)のShort-formを用いた。 男子が最も多く経験していると応えたとは誰かが“欠点などをからかう"のを黙って見ていたことで,少しあるとあるを合わせると88.3%に達した。次いで自ら“欠点などをからかう",誰かが“無視する"のを黙って見ていたであった。女子でも誰かが“欠点などをからかう"のを黙って見ていたが78.6%で最も多く,次いで自ら“無視する",誰かに“欠点などをからかわれた"であった。「いじめ」の顕在化しやすい“足をかける・髪を引っぱる"は男女とも最も少なく,言語を介した「いじめ」や無視が多いことがうかがわれた。 精神健康状態との関連性は,男子ではいずれの「いじめ」加害者経験も被害者経験も関連を認めなかったが,傍観者経験が特性不安と有意な関連性を示していた。一方,女子においては,被害者経験と抑うつ症状・特性不安との有意な関連を認め,特に抑うつ症状との関連が高かった。これらより,中学性期に「いじめ」られた経験は,女子のその後の抑うつ傾向および不安傾向(特性的な不安)をもたらしていることがうかがわれ,「いじめ」を傍らで見ていた経験は,男子のその後の不安傾向を助長していることがうかがわれた。 また,本研究費補助により,欧米における「いじめ」研究の文献レビューを行った。
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