研究概要 |
近年我が国では、若年者におけるI型アレルギー疾患の急増が著しい。その一方で、臨床などにおいてアレルギー疾患と必須微量元素である亜鉛との関連性が報告されている。そこで、本研究では予防医学的見地から大規模な若年者のI型アレルギーの実体を調査し、生体内亜鉛動態の一つの指標である血清亜鉛濃度とI型アレルギーとの関連性について検討した。 まず、大学生2,899名(男性1,894名、女性1,005名)を対象に、1996年の4-5月に質問票による調査を行った。その結果、アレルギー体質であると自覚している者は男性17.2%、女性24.9%であった。そのうちアトピー体質であると自覚している者は、約半数を占めていた。 次に、同様な対象者(女子学生140名)について和光純薬製亜鉛測定キットを用いて血清亜鉛濃度を測定したところ、アレルギー体質であると自覚している者(85.4±13.1μg/dl)とアレルギー体質であると自覚していない者(86.0±11.7μg/dl)との間に統計的に有意な差は認められなかった。ところが、55名について最大酸素摂取量の50%に相当する運動を1日30分間、週3回、6週間負荷したところ、アレルギー体質であると自覚している者(14名)においては85.0±7.8μg/dlから83.2±8.5μg/dlへと低下する傾向を示した。アレルギー体質であると自覚していない者(41名)は85.0±13.2μg/dlから85.1±14.2μg/dlと変化は認められなかった。さらに、I型アレルギーの指標である血清lgE濃度と血清亜鉛濃度の関連について20-50歳の健常な男性221名を対象に検討したが、統計的に有意な相関関係は認められなかった。 本研究ではアレルギー体質であると自覚している者において軽度運動負荷による血清亜鉛濃度の低下が認められたことから、I型アレルギーが運動習慣による生体内亜鉛動態と関連している可能性が示唆された。
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