研究概要 |
唾液や消化管粘膜などのABO血液型の発現にはsecretor typeのα(1,2)フコシルトランスフェラーゼ遺伝子(FUT2)が関与していると考えられている。これらの組織にABO血液型物質が発現できない非分泌型の個体より、ゲノムDNAを抽出し、FUT2をPCR法により増幅し、これをDNAシークエンス解析した。その結果(1)385番目の塩基がAからTに置換し、それによりコドン129のアミノ酸がイソロイシンからフェニルアラニンに置換しているミスセンス変異(2)571番目のCがTに置換し、その結果コドン191番目のアルギニンがストップコドンに変わるナンセンス変異(3)628番目のCがTに置換しその結果コドン210番目のアルギニンがストップコドンに変わるナンセンス変異(4)FUT2とその偽遺伝子がunequal crossoverによって融合したFusion ganeといった4種のnull alleleを日本人集団において発見した。さらにこれらの変異を持つ真核細胞発現ベクターを構築し、これらの真核細胞(COS7)にトランスフェクトすることにより、これらの変異の結果FUT2にコードされているα(1,2)フコシルトランスフェラーゼが失活することを示した(Am.J.Hum.Genet.,59,343-350,1996)。また赤血球のABO血液型発現を調節しているH typeのα(1,2)フコシルトランスフェラーゼ遺伝子(FUT1)をパラボンベイ個体で解析し、2種のミスセンス変異を発見し、これらの変異によりFUT1にコードされている酵素の活性が消失することを示した(Vox Sang.,72,31-35,1997)。
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