研究概要 |
シェ-グレン症候群の発症に成人型T細胞白血病ウイルスI(HTLV-I)感染が密接に関与することを、申請者らのグループが初めて証明した。そこで今回、病変局所でのウイルスの存在様式および病原性発現の機構を解析する為に以下の研究を遂行した。 1.材料:血清抗HTLV-I抗体陽性シェ-グレン症候群(以下SjSと略す)8名および本抗体陰性SjS9名より、患者の同意を得た上で末梢血単核球および小唾液腺組織を採取した。 2.病理学的検討:抗体陽性、陰性SjSの小唾液腺をHE染色および免疫染色を行った。(1)細胞浸潤および腺破壊、線維化の程度は両者間に差を認めなかった。(2)浸潤細胞は両者ともCD4陽性のT細胞が主体であり、CD8陽性T細胞やB細胞の浸潤はごく少数であり陽性SjSについても従来のSjSの病理所見と差はなかった。つまり病因は異なっても惹起される免疫反応は同じことを意味すると考えられた。(3)抗体陽性SjS患者の唾液腺組織にてHTLV-IpX,gag領域を標的とするin situ PCRを試みたが非特異的反応が強く現段階では陽性細胞を同定出来なかった。 3.PCR:末梢血単核球と小唾液腺組織よりgenomic DNAを抽出後、PCRを行った。(1)HTLV-IpX,gag,pol,LTR各領域を標的とした定性PCRでは、全抗体陽性SjSの両検体とも全領域が増幅された。(2)半定量PCRを用いた結果、半数の4例において末梢血単核球より小唾液腺に高いウイルス量を認め、局所への特異的なHTLV-I感染細胞の集積が示唆された。 4.ウイルス発現量の検討:実際に得られる検体量が少なく現時点では病変局所特異的な領域の解析は施行していない。 5.抗体陰性SjSへのHTLV-I感染の関与:9例の抗体陰性SjS中1例の小唾液腺にpX領域のみがPCRにて増幅され、他の領域は認めなかった。塩基配列解析の結果、HTLV-Iと99%の相同性を示しSjSjへのseronegative HTLV-I infectionしかもdefective virusが免疫反応の誘因となった可能性があり、今後症例を増やし病態形成との関連性について検討する必要がある。
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