研究概要 |
高血圧症は多因子性の量的表現型を示す遺伝的疾患とされてきた。我々は高血圧の多因子性を解明するために遺伝的高血圧の疾患モデルである高血圧自然発症ラット(SHR)を用い、主遺伝子の効果を顕在化しうる呑龍ラットとの戻し交配を行い、血圧と細胞内Caを測定することで細胞レベルでのCa代謝異常を中間表現型とするユニークな連鎖解析モデルを作成した(Ohno et al,Clin Exp Pharm Physiol,1995;Onho et al,Am J Hypertens,in press)。候補遺伝子の一つである2型筋小胞体Caポンプ遺伝子(SERCAII)の制限酵素多型が細胞内Ca値と連関し、主遺伝子の効果を統計学的に判別すると血圧値ともリンクすることを明らかにした。従ってSERCAII遺伝子の近傍に細胞内Ca値を遺伝的に規定する遺伝子があり、これは血圧値に関しては主遺伝子とは別のMinor geneであることが示された(Ohno et al,BBRC,1996)。この結果SHRのSubstrain analysisの結果と一致した(Ohno et al,J Hypertens,1995)。SHRxDRYの戻し交配解析において、SERCAIIの遺伝子型を検討し、SERCAII Heterozygotesにおいて主遺伝子の効果を明瞭化するという遺伝子座位間相互作用(Epistasis)を用いて、SERCAIIのHeterozygotesを対象として、効率的にMicrosattelite markerによるTotal genome scanningを行った。主遺伝子座位がChromosome1のSA gene(SHRの腎において特異的に過剰発現する)の近傍にあることをつきとめた。さらにSA geneの近傍については全戻し交配ラットを対象とし詳細なMappingを行った。SA geneからやや離れた座位において、最も血圧との連関が強く、HomoとHeteroで10mmHgの差があることを明らかにした。また、今回明らかにした主遺伝子座位とSERCAII座位が血圧に関しては両遺伝子座位間に相互作用があり、主遺伝子がヘテロの時に筋小胞体Caポンプ遺伝子座位の血圧との連関を統計学的に示した。
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