研究概要 |
B型肝炎ウイルス感染症は様々な病態が存在し、これらの病態の多様性にウイルス変異が関与していることが明かとなった。我々は既にpre-C/Core領域の変異と病態が関係していることを報告した。一方、pre-S/SあるいはCore promotor領域の変異と病態との関係についての報告もみられる。本研究の目的は、これら様々な変異のうちより病態と関連した変異が存在するのか、どの領域のどの変異が最も重要であるのか明らかにすることである。 これまでの研究によりB型肝炎ウイルスの全塩基配列を増幅しうるPCR法を用い、無症候性キャリアー9例、初期のB型慢性肝炎患者4例、進行したB型慢性肝炎患者10例の血清からウイルスDNAを増幅し全塩基配列の解析を行った。その結果、B型肝炎ウイルスの4つのopen reading frame(pre-C/Core,pre-S1.2/S,Polymerase,X領域)と2つのEnhancer 1.2領域のうち、病態の進行と関連して変異がみられた領域は、pre-C/Core,pre-S1.2,Enhancer2(Core promotor)領域であった。さらにこれらの変異は病態の進行にに伴い集積する傾向が認められた。一方、XとEnhancer1領域の変異と病態との間には明かな関係は認められなかった。初期のB型慢性肝炎患者の検討ではCore,pre-S1.2領域には散在性に変異がみられ、Enhancer2(Core promotor)領域では特定部位に2例で変異がみられた。このことはCore,pre-S1.2領域は免疫標的の可能性があり、肝炎初期では各症例により認識部位が異なるために変異が散在性に起こると考えられる。今後はこれら初期の肝炎例でみられた変異について詳細な検討を行う予定である。
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