研究概要 |
潰瘍性大腸炎(UC)には、HLA抗原以外にも遺伝的な要因が関与していることが推定されている。そこで我々は、免疫担当分子であるICAM1・ELAM1遺伝子多型性に注目しUC疾患感受性への関与を検討した。【対象と方法】潰瘍性大腸炎患者25例、クローン病6例、正常人30例のヘパリン加末梢血よりフェノールクロロフォルム法にて高分子DNAを抽出し、ICAM1多型性に関しては既知のG/R241及びK/E469多型につきPCR-RELP法を用い、ELAM1多型性については5UT領域を3分割しPCR-SSCP法を用いて検討した。【結果】♯1,ICAM1遺伝子G/R241多型性に関しては日本人において多型を検出し得なかった。K/E469多型については、K対立遺伝子を示すものがUC患者62%・CD患者58%・正常45%と正常に比しIBD患者で多い傾向にあった(UC:p=0.041,CD:p=0.09)。またUC患者につき、初回発症時の重症度・罹患範囲・内視鏡像・発症年齢・ステロイド投与量・臨床病型について検討したところK469対立遺伝子を示す患者では、より初回発症時に重症で罹患範囲の広い傾向を認めた。♯2,ELAM1分子発現量に関与すると推定されたSELE5'UT全領域における遺伝子多型性は現行のPCR-SSCP条件下では検出されておらず泳動温度条件を再検討中である。【結語】日本人UC患者ではICAM1 K469対立遺伝子が多く、また重症となる傾向を示しており接着分子のUCへの関与を示唆し興味深い結果であった。当初予定のELAM1遺伝子多型性は欧米で既報の多型お5'UT領域の多型も日本人においては検出できなかった。検出方法を改善し再度検討の予定である。
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