未治療で経過観察しえた肝癌境界病変を用い、生検組織像および画像診断で評価した血行動態における肝癌進展を推測する予後因子について検討した。 対象は一年以上経過観察できた境界病変32結節(結節径5-20mm)である。生検肝組織を用いて核密度比(結節内/結節外)、small cell dysplasia、large cell dysplasia、小腺管形成、淡明細胞化、核の類洞側偏位、肝脂肪化、染色性の変化、鍍銀繊維の減少の有無について検討した。また、動脈血流は急速静注CT及び同MRIでの早期濃染の有無により評価した。門脈血流は門脈造影下CT(CT-AP)におけるperfusion defectの有無により評価した。肝細胞癌への進展はいずれも組織学的に確認した。 平均観察期間30ヶ月において5結節が6-15ヶ月で肝癌へと進展した(肝癌進展群:H群)。他の27結節は画像所見上、不変かあるいは消失した(肝癌非進展群:N群)。核密度比はH群1.44±0.35、N群1.00±0.25と有意にH群で高値であった(P<0.005)。H群ではsmall cell dysplasiaが4/5(80%)、淡明細胞化が3/5(60%)、肝脂肪化が5/5(100%)とN群より有意に高率にみられた(N群はそれぞれ5/27(19%)、2/27(7%)、10/27(37%))。血行動態では、動脈血流が増加している結節はなかった。一方、CT-APで門脈血流低下をみとめたのは、H群3/5(60%)に対し、N群は2/27(5%)であった(P<0.05)。 以上より生検組織において、核密度の増加、Small cell dysplasia、淡明細胞化、肝脂肪化をみとめる結節及び門脈血流の低下を示す結節は、肝癌に進展する危険性の高い結節として対処すべきと考えられた。
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