研究課題/領域番号 |
08770361
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研究種目 |
奨励研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
消化器内科学
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
岸本 洋輔 鳥取大学, 医学部, 助手 (10273905)
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研究期間 (年度) |
1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
1996年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | p53 / RB / 8p / loss of heterozygosity / hepatocellular carcinoma / liver cirrhosis |
研究概要 |
これまで肝細胞癌(HCC)の癌部について癌抑制遺伝子p53及びRBの変化や8p(第8番染色体短腕)の欠失が重要な異常として報告されている。今回の研究ではp53、RB、8pの欠失をHCC部、及び臨床的に前癌病変と考えられる肝硬変(LC)部で同時に検討し、近年各種の癌で唱えられている多段階発癌機序をHCCにおいて解明し、LC患者での癌発生の予知等の可能性を検討することを目的とした。手術で得られた14例のHCC患者のパラフィン包埋切片よりmicrodissectionされた細胞からDNAを抽出し、nested-PCRで各部位(p53、RB、8p)を増幅し、loss of heterozygosity (LOH)を検討した。まず8pについては、54%の患者のHCC部にLOHを認め、そのLC部に高率(70.0% of microdissected foci(MF))にLOHを認めた。HCC部のLOHのパターンは癌細胞のclonal growthを示唆したが、LC部ではその欠失したアレルのパターンがrandomであった為、8pのLOHはLC部でのかなり早期の変化と考えられた。p53では66.7%の患者のHCC部にLOHが認められたが、LC部ではMFの17.6%と低頻度であった。RBでは70.0%の患者のHCCにLOHが認められ、それらのLC部ではMFの68.2%がLOHを示した。p53とRBの関係については従来の報告のようにそれぞれのLOHがHCC部では同時に起こっていた。しかし、今回の研究で新たに、LC部ではRB遺伝子の異常が比較的早期に出現し、その後p53遺伝子の異常が起こり、悪性腫瘍へと進むことが推測された。このことは、p53とRBが協調して細胞周期に関与することを考えると肝発癌機構の重要なポイントと考えられる。なおHCCやLCにおけるLOHの起こり方について8pとp53及びRBの間には明らかな関連性はなかった。8pはp53やRBとは別のpathwayで発癌に関与していることが推測された。なお、8pやRBのようにLC部で比較的早期に出現する変化はLC段階での発癌の予知に使える可能性がある。
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