研究概要 |
我々のグループでは、ヒト肝組織においてneural cell adhesion molecule (N-CAM)を免疫組織化学的に染色することにより、stellate cellにN-CAMの発現が認められることを報告した(Cell Tissue Res 283 : 159-165,1996)。そこで、ラット肝組織においてN-CAMを染色し、その発現について検討した。正常ラットでは、門脈域の神経線維と中心静脈周囲の筋線維芽細胞にN-CAMの発現を認めたが、小葉内にはほとんど染色されなかった。四塩化炭素障害ラット肝では、中心静脈周囲の肝実質壊死部および線維性隔壁に集蔟する間質細胞にN-CAMの発現を認め、電顕観察により活性化したstellate cellであることが判明した。また、この細胞のほとんどがα-smooth muscle actin陽性であった。以上より、ラットstellate cellはヒトの場合と異なり、正常ではN-CAMを発現しないが、活性化に伴って陽性となることが示唆された。また、ヒト正常肝と慢性障害肝においてc-myb蛋白を免疫組織化学的に染色すると、正常肝ではほとんど染色されなかったが、慢性障害肝では門脈域と小葉内に陽性細胞が認められた。免疫電顕にて観察すると、活性化したstellate cellにc-mybが陽性となることが判明した。c-myb陽性細胞の多寡は肝の炎症の度合と相関していた(Hepatology 24 : 347,1996)。近年stellate cellは肝線維化と密接な関わりがあることが判明しているが、今回の研究では、慢性肝障害、肝細胞壊死、肝再生、線維化とのかね合いを中心に検討した。
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