研究概要 |
1.抗大腸抗体産生B細胞クローンの樹立 潰瘍性大腸炎患者病変部大腸粘膜より抗大腸抗体産生B細胞クローンの樹立した。LPLおよびPBLより樹立した抗大腸抗体産生B細胞クローンの検討では、リミティングダイリューション法より、その存在頻度はLPLでは細胞100万個あたり12.5〜1.5個、PBLでは0.5〜0.1個の頻度であることが計算上示された。 2.PCR法によるVH遺伝子ファミリーの発現の検討 抗大腸抗体産生B細胞クローンよりRNAを抽出し、RT-PCR法により各クローンのVH遺伝子ファミリーの発現を検討した。健常人の末梢血より樹立したIgG産生(抗大腸抗体非産生)B細胞クローンではさまざまなVH遺伝子を発現していたのに対して、潰瘍性大腸炎患者より樹立した抗大腸抗体産生B細胞クローンではLPLの3個、PBLの7個のクローンがすべてVH3ファミリーを発現していた。 3.抗大腸抗体産生B細胞におけるVH遺伝子の塩基配列の解析 VH3ファミリーを発現していた抗大腸抗体産生B細胞クローンのうち、LPLの2個、PBLの3個のクローンについてVH領域の遺伝子の塩基配列を解析したところ、検討した5個のクローンでフレームワーク領域の塩基配列は非常に保たれていたが、相補性決定領域(complementarity denermining region,CDR)で多様性を認めた。胚細胞上の遺伝子と塩基配列の相同性を検討すると、同一患者のLPLの2個クローンでは同一の遺伝子(VH26)より由来していると考えられたが、PBLの3個のクローンは、それぞれ異なる胚細胞上の遺伝子に由来していると考えられた。体細胞突然変異の出現頻度については、これまでに報告されている他の自己免疫疾患と比べて胚細胞上の遺伝子と塩基配列の相同性が低いため、未知の遺伝子に由来する可能性をも含め今後の検討課題である。
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