培養血管内皮細胞へ各種慢性肝疾患患者の血漿を添加し、その後の組織プラスミノーゲンアクチベータ-(t-PA)分泌量を測定し、血漿中の因子が直接的に血管内皮細胞からのt-PA放出を亢進させているか否かを検討した。また、肝疾患患者血漿添加後にトロンビンを添加し、t-PA放出刺激時における反応性の変化への関与についても検討した。 慢性肝炎活動性(CH群)、代償性肝硬変(LCC群)、非代償性肝硬変(LCD群)、健常人(Nor群)の血漿を添加し、放出されたt-PAはLCD群でLCC群、Nor群に比し有意の高値を示した(p<0.01、p<0.05)。LCC群はCH群、LCD群に比し有意に低値を示した(p<0.05、p<0.01)。PAI-1は、Nor群、CH群、LCC群、LCD群とも各群間に有意差は認められなかった。トロンビン刺激により、血管内皮細胞から放出されるt-PA量(Δt-PA)はLCC群でNor群、CH群、LCD群に比して有意に低値を示した(各々p<0.01)。ΔPAI-1はLCC群で、Nor群、CH群、LCD群に比して有意に低値を示した(各々p<0.05)。 肝疾患の血漿中の因子は、血管内皮細胞からのt-PA放出を直接的に制御し、さらに血管内皮細胞のt-PA放出に対する易刺激性も変化させる二重の作用が存在する事が判明した。PAI-1放出に関しては、t-PAの上昇に連動してPAI-1の放出を誘発していると考えられた。
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