研究概要 |
培養伊東細胞は,エンドセリン-1(ET-1)により収縮することが知られている。また,同細胞は細胞質にアクチンやミオシンなどの収縮性蛋白が存在し,これらの物質が伊東細胞の収縮や弛緩に強く関与していることが推測される。そこで今回,収縮した伊東細胞内の細胞骨格の変化について検討した。 伊東細胞は,Wistar系雄性ラット肝より分離し24時間培養した。共焦点レーザー走査型顕微鏡を用いた蛍光抗体間接法により,ET-1添加前後の伊東細胞内のアクチンやミオシン,さらにデスミンの局在について検討した。また,細胞内Ca^<2+>の変化はFluo-3AMを含むハンクス液を作製し共焦点レーザー走査型顕微鏡にて観察した。その結果200pMのET-1を添加することにより,伊東細胞内のアクチンやミオシンは核周囲への集簇,そして細胞質辺縁に限局的な線維の集合束として観察された。デスミン線維は核周囲に集簇し,細胞質のデスミン線維は減少していた。次にCa^<2+>の変化を観察すると,ET-1添加前は細胞質全体にCa^<2+>の分布がみられたが,200nMのET-1を添加するとCa^<2+>の分布は核周囲から細胞質,およびその細胞質辺縁に移動し分布していた。その後,約2分30秒後にはET-1添加前の分布に近い状態まで回復した。このように,収縮した伊東細胞の核周囲にアクチンやミチシン,さらにはデスミン線維が集束していた。また,ET-1添加によりCa^<2+>の分布が細胞質辺縁へと変化した。 このことから,培養伊東細胞はアクチンやミオシン,あるいはデスミンなどの細胞骨格の相互作用により収縮の調節が行われると同時に,Ca^<2+>が収縮に大きく関与しているものと考えられる。
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