石綿肺の存在を知る方法として臨床的には胸部レントゲンが用いられている。しかし胸部レントゲン上異常を認めない例でも組織学的には石綿肺所見を認めることが報告されており、また石綿肺の非可逆的性質から病変をより早期に発見し、それ以上の進行を未然に防ぐことが重要と考えられる。本研究の目的は肺胞「型上皮細胞で特異的に合成されるサーファクタントプロテインA (SP-A)が石綿暴露によりどの様に変化するかを明らかにし、臨床的に血清中SP-Aが石綿肺の早期診断マーカーとしての有用性を明らかにすることにある。 石綿肺患者34名、胸部レントゲン上石綿肺病変を認めない15年以上の長期石綿暴露者98名、健常者対照98名を対象に血清中SP-Aを測定した。健常対照と比較し、石綿肺では有意に血清SP-A値が上昇していた。健常対照の平均+2SDを正常上限としたところ、石綿暴露者では26%に血清SP-A値の上昇を認めた。疫学的には喫煙により石綿肺の進行が促進されると報告されているため、血清SP-Aの喫煙による影響を検討したところ、石綿暴露者の喫煙者で非喫煙者と比較し有意に血清SP-A値が上昇していた。 以上から血清SP-A値は石綿暴露による肺障害及び線維化の早期のマーカーとなる可能性があると考えられた。
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