研究概要 |
宿主免疫担当細胞においてキラーT細胞(Cytotoxic T lymphocytes:CTL)はMHC拘束性かつ抗原特異的に自家の癌細胞を認識し攻撃する。このようなCTLはメラノーマをはじめとし肺癌、卵巣癌、胃癌などの多くの癌の局所に集中的に存在し生体防御に重要な役割を果たしている。最近の細胞の培養技術の進展によりこのような自家癌特異的CTLを大量培養しIL-2とともに投与する養子免疫療法を実施されメラノーマではある程度の臨床効果が得られた。しかしながら、CTLの養子免疫療法の臨床効果は極めて限定されており、現在は新たな試みとしCTLを生体内にて養育し再発を防止する試み(ワクチン療法)が行われている。特に、メラノーマでは臨床レベルにおいて急激に進展しつつある。このワクチン療法の今までと異なる点は、CTLの標的となる腫瘍抗原を遺伝子レベルでクローニングしそれをワクチン源とすることである。我々は、肺癌患者癌性胸水より腺癌細胞株(LCl)を樹立し、そして胸水より自家癌特異的CTL(CTL-LCl/A33)を樹立しこれがHLA-A3302拘束性腺癌特異的CTLであることを明らかにした。そのほかHLA-A locus-specific,tumor-specific CTL株を多数樹立しその解析を行った(Seki et al.,Cell Immunol,in press)。申請者らは自家肺癌株(LCl)及びHLA-A3302拘束性肺腺癌特異的CTL株(CTL-LCl/A33)の大量培養に成功した。これにより、同CTL株を用いての癌退縮遺伝子同定が可能となり、これまではメラノーマのみに限定されていた本領域の研究が肺癌でも見通しがついた。これらの研究が腺癌に対する新しい癌ワクチンの開発に科学的根拠を賦与するものとして考えられる。現在これらHLA-A locus-specific,tumor-specific CTL株が認識する抗原遺伝子をクローニングを試みている。
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