遺伝性運動失調症は遺伝的に不均一な疾患群であり、これまでにSCA1〜SCA7、DRPLAの計8個の遺伝子座が知られている。その中で、SCA5遺伝子座は、染色体11番セントロメア近傍にマップされているが、その原因遺伝子は未だ明らかにされていない。我々は、SCA5の原因遺伝子の単離および遺伝性運動失調症の発症機序の解明を目標に以下の研究を行った。 1.現在SCA5遺伝子座は、2つの多型性DNAマーカーD11S913とGATA2A01の間の8cMの中に存在すると考えられている。そこで、これらのDNAマーカーを用いて、臨床的にSCA5と考えられる1家系で連鎖解析を行った。新たな組み換えが認められるか否かについては、現在解析中である。 2.これまでにSCA1、2、3、6、FRPLAの原因遺伝子が明らかとなっている。そこで、日本の遺伝性運動失調症の実態を把握するために、インフォームド・コンセントに基づき、近畿地方在住の遺伝性運動失調症47家系に対し遺伝子診断を行なった。その結果、多くのSCA1家系が報告されている北海道、東北地方と対照的に、近畿地方ではSCA1では遺伝子変異は稀であることが判明した。このことは、日本の遺伝性運動失調症には、地域特異性があることを示唆する(論文として発表した)。 3.上記スクリーニングの過程で、SCA3 (Machado-Joseph病)の家系が23家系見つかった。この病気の原因はMJD1遺伝子内に存在するCAGリピートの異常伸長によることが明らかにされている。我々は、MJD1遺伝子のある種の遺伝的多型が、CAGリピートの異常伸長に深く関わっていることを見い出した(論文として発表した)。
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